【令和の初歩きで肝を冷やす…鋸尾根&長尾根】 山バス情報179
(ヒカゲツツジを見に出掛けたのですが…)
【山行日】 2019年05月04日(祝)
【使用公共交通機関の詳細】
「鉄道」
中央線某駅 - 07:21 高尾 (JR中央線各駅停車)
高尾 07:26 - 08:08 猿橋 (JR中央線各駅停車)
「バス」
猿橋駅 08:28 - 08:53 杉平入口 (富士急山梨バス 440円)
「歩行」
杉平入口 09:00 - 10:55 1030m付近? (3回目の休憩)
1030 11:05 - 11:45 三ツ森北峰
三ツ森北峰 12:10 - 12:50 長尾根に乗る
長尾根 12:55 - 14:35 冨岡バス停 (途中雷に怯え、登山道を外れて避難)
「バス」
冨岡 15:09 - 15:33 猿橋駅 (富士急山梨バス 410円:10分ほど遅延)
「鉄道」
猿橋 15:48 - 16:33 高尾 (中央線各駅停車)
高尾 16:37 - 中央線某駅 (中央線各駅停車)
【地形図】 「大月」 「七保」
(雹に降られ雷に迫られ、非常におっかない思いをしました)
令和の初歩きって、それよりおまえ、平成の歩き納めが2月のアタマってどういうこと?というお叱りがあるのは、ごもっともです。またまた、あれこれ言い訳をしつつ、山に行くのをサボっておりました。
この日は最近また再々復活しようかと考えていたアマチュア無線の移動運用がてら、お気に入りのコースで去年見なかったヒカゲさんでも見に行こうかと、早起きしてのんびり朝食を家でとってから出掛けました。
それでも駅には時間より早く着いてしまい、いつもより一本前の電車で高尾には07:21着。座れなかったら、次の大月河口湖行きでもいいやという感じだったのですが、07:26発の小淵沢行きに座れてしまったので、猿橋にはひとつ早い電車で到着。上和田行きのバスはGWだけあって、団体さんが乗っていたりしましたが、私以外は予想通り福泉寺前で全員下車。運転手さんは全員降りたものだとばかり思っていたらしく、私が冨岡を過ぎたあたりで降車ボタンを押すまで気づかなかったようです。
快晴とまでは言いませんが、青空が広がり、好天の山日和としか思えない五月の明るい陽差しの中、集落を抜けて登山口へ向かいます。登山口では前回同様、オゴシ山の尾根の中腹まで新緑が駆け上がっているのが見え↑、3ヶ月ブランクで少々しんどいだろうけれど、ゆっくりのんびり行けば静かで楽しい山歩きが出来そうだと期待を胸にスタートです。
しかししかし、歩き始めてから10分ほどで、息が上がり苦しくてたまりません。努めてゆっくり歩いたつもりなのですが、荷物が重く感じ、Tシャツ1枚になっているのに汗が滴ります。今日は八木アンテナも持ってきたので無線道具一式だけで1kg近くプラスされてしまうのですが、持ってきたことを本当に後悔しました。
(新緑が美しいものの苦しくて仕方なかった)
ひと息入れてから気を取り直して歩き始めるものの、無線機というより、自分の身体が重く感じて、これはもう引き返そうか、と二回目の休憩を入れながら考えました。しかし、帰りのバスは12時まで無いのはわかっていましたので、あと30分ほど歩いてみて、ダメそうなら引き返すことにしてよたよたと登っていきました。
すると、傾斜が緩んできたせいか、足取りも軽くなり、呼吸も乱れずに、いつもの山歩きのリズムが出てきました。みずみずしいライトグリーンの新緑が目を楽しませてくれて、30分はあっという間に過ぎて、1時間ほど休まずに登っていくことが出来ました。
(調子も出てきて快調になった)
こうなればしめたもので、道ばたに咲く小さなスミレや時折現れるトウゴクミツバツツジ(既に終盤)を写真に収めながらのゆったりした登りが楽しめ、快調だったのですが、ちょうどこれから向かう三ツ森北峰から麻生山辺り上方の雲の色が黒いのが、この時点で少々気がかりではありました。
(気がかりな色の雲ではあったが、移動してくれた)
しかし登って行くにつれ、雲の方が移動してくれて、鏡のある三ツ森北峰では、無線を聞きながらのんびりお昼ごはんを食べることが出来たのです。予定では、15時のバスは小菅の湯から来るため混雑するので、16時のバスに間に合うようにここでアンテナを設営してCQでも出してみようかと考えていたのですが、やはり近くにある黒い雲だけでなく奥多摩から奥秩父にかけての雲の色が気になって、今日のところはCQはやめにして、一局だけCQ応答しようか…とも考えていたのです。
しかしどうにもちょっとイヤな予感がしてきたので、それもやめて、腰を上げ、ヒカゲツツジを見に行くことにしました。ヒカゲさんは去年の台風で、折れて流れた樹などもありますが、全体にもう終盤のようで、それほど堪能は出来ませんでした。ただ、あの大人びた感じのクリーム色の綺麗な花を今年は見ることが出来たのでよしとします。
(ヒカゲツツジは終盤)
一方イワカガミですが、こちらは、まだこれからという感じで、蕾から花が出てきたのが数輪確認できただけで開花はまだと言う状態でした。ただ、踏みつけによってダメになっている葉っぱが結構見つかりましたので、次の週末でもあまり楽しめないかも知れません。
(イワカガミはもうちょい先)
と、そんなお花見をしていると背後の奥多摩・奥秩父方面でしょうか、雷鳴がゴロゴロと聞こえてきました。やっぱりちょっと気味が悪かったので、尾名手峠に降りると、稜線ではなく巻き径を伝って降りることに。少々早めにバス停に着いてしまうかも知れませんが、雨に降られる前に山を下りてしまった方が好さそうだと判断したのです。
この巻き径は以前に何度か通ったことがありますので、長尾根に乗るまで結構時間がかかることは判っていました。そしてザレている為に通行には少々注意が必要なことも。。。陽差しは結構ありますが、一方で北から黒い雲が忍び寄ってくることもこの時点で気づいていました。
(長尾根に入ったところの新緑、相変わらずの美しさに感嘆していた)
それでも長尾根に乗った時点ではまだ、雨に降られるとしても下山してからではないかと考えていたのです。途中で咲いているスミレやリンドウを写真に収めていたぐらいですから、それほどの危機感はありませんでした。それで、長尾根に乗ったところで一呼吸入れてしまいました。ほんの5分ほどだったのですが、大月市の指導標が相変わらず壊れたままでしたから、これは新設して欲しいなぁ…などと考えながらテルモスのお茶を空けて水分補給したのです。この時点で13時前でした。
(長尾根に乗ったところにある指導標…新しくして欲しいなぁ)
長尾根を下り始めて間もなくのことだったと思います。気のせいではなく風に乗って夕立の時のあの雨のにおいがしてきました。そこで、ああ、これはやっぱりやばいよな~と考えながら少し小走りで下っていきました。それでもまだ13:15頃まではヒトリシズカの写真など撮っていましたので、深刻ではなかったことは確かです。
ああ、やっぱりこれは下山前に降られるのは間違いない、けど、雷はイヤだなぁ…と思いつつ、撮ったのがこの写真。
咲き残りの山桜と新緑ですが、バックはどす黒い雲です。と、そのうち雷鳴が頻繁になり、ポツポツと降ってきました。これは高度をとにかく下げないと…という思いで駆け下りますが、久々の山歩きでは足がうまく運ばず、筋肉痛が襲ってきます。それでも命には代えられない!とばかり、もうここ何年かやったことがないぐらいの駆け足で下っていきます。時折見る高度計表示が思うように下がらず苛々して毒づいたりして、まぁ、結構大変な精神状態でした、今考えると。。。
で、トドメは雨が雹(ひょう)になって、びしびしと頭や首を打ち付けてきたことでした。今まで雨や雷は経験がありましたが、雹は山では初めてです。大きさはたいしたことがないのですが、これが雨脚が強まるととんでもないことになるんです。冷たいし痛いし、おまけに雷鳴はどんどん近づいてくるし、辺りはあっという間に暗くなるし。。。本当に命からがら逃げるというのはこのことでした。
ようやく長尾根の主稜から左手に外れる道に入ってくれたのですが、雷鳴は近づくばかり。雹の数と勢いは容赦なく強まるし、かといってレインウエアを着るより高度を下げ少しでも尾根から外れたところに行く方が大事と判断したため、レインウエアを着る決断が出来ません。
結局雷鳴がすぐそばまで来たと判断して、登山道を離れてでも尾根から外れるのが肝心と、登山道を離れる決断をして、尾根から数メートルのところに降りていって、慌ててレインウエアを着ることに。
雹がたたきつけるので、手もかじかむし、レインウエアを引っ張り出して着る間も雷鳴がとどろいて、ようやく着たあともほぼ頭上で稲妻が光るしで、ホント生きた心地がしません。雷に打たれて感電死するのは宝くじで1億円以上に当選するより確率は低いのですが、一方で落雷地点ほど自然の気まぐれなものもありませんから、雷が通り過ぎて雨脚がすっかり弱くなるまでは、じっとして祈るしかありませんでした。この間推定20分ほど。
(ザックの上で溶けずにいる雹…中はぐしょ濡れだった)
レインウエアを着るのが精一杯だったのと、ザックを離れたところに置いたために、ザックの中身はほとんどぐしょ濡れでした。着替えや念のために用意しておいた防寒具も水を含んで使い物にならない状態。後で気がついたことですが、忘れ物はないと確認したにもかかわらず、レインウエアを収納する袋だけ、落としたのか置き忘れたのか、帰ってきてから点検してもついに見つかりませんでした。
とぼとぼと歩いてくと、避難地点は駒宮砦と光養寺との分岐まで5分ほどのところと判りました。空も北の方が明るくなってきて、雷鳴も遠のいたことが判りましたが、やはりたった今のあの後では気が気ではなく、何とか生きて帰れそうだとメドがたったにもかかわらず、さえない表情だったのではないかと思います。
(雨の上がりつつある集落をとぼとぼ歩く)
ようやく人心地がついたのは、やはり冨岡のバス停を目にしたときでしょうか。バス停すぐそばの駐車スペースのようなところで着ているレインウエアを脱いで、あとは着干しで何とかなるだろう、バス時間までの30分ほどが少し寒いかも知れないけれど、幸い冬でもないので何とかなりそうだと、身支度をしていると、ほぼ向かいにお住まいのご夫婦が声をかけて下さいました。
下着のシャツを1枚譲って下さったうえに、ドライヤーで上に着ていたシャツも乾かして頂き、温かいお茶とお茶菓子までいただいてしまい、いろいろとお話も聞かせて下さり、本当にありがたかったです。勝手に遊びに来て雨に濡れて、替えの下着まで濡らしてしまったしょうもない登山者にここまで親切にしていただいて、何とお礼を申し上げて良いやら、ただ帰り際に阿呆のように頭を下げるしかありませんでした。
(バス停留所でバスを待つ…)
バスは予想通り、席はすべて埋まっており、途中浅川入口から団体さんも乗り込んで満員御礼状態、猿橋から先の中央線も猿橋の時点で立ち客で通路がすべて埋まっていたほど、とGWらしい混雑ぶりでしたが、最後の思いがけない親切に接したためか、終始笑顔で乗車でき、何よりも
「とにかく無事に家に帰ってくること」
こそが山歩きで一番重要なことと痛切に感じながら帰途についたのでした。
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