【アカヤシオ姫に逢いに…矢岳北尾根 その2】
お昼ごはんを済ませて、下りに入ります。下ってみると、やはり先ほどの北尾根に比べ、こちらはエアリア赤破線とはいえ、一般登山道。踏み跡はしっかりしていて、ある程度山慣れた人であれば、下りにとってもそれほど難しく感じないと思います…というか、矢岳の場合、これ以外にいわゆる一般登山道は存在しないので選択の余地もないです。
この登山道は、指導標の数こそ少ないものの、間違いやすい急所にはお手製の指導標があったりして、要所は押さえられています。大反山は植林の中の本当につまらない薄暗いピークにすぎませんから、大反山手前の鞍部でお手製の指導標に従って武州中川に下るぶんには長いけれど危険なところもない登山道だと思います。私のように偏執的に(笑)尾根の末端までたどる必要はないでしょう…が、実際は下ってしまったので、この記事には末端までレポします。いうまでもなく、尾根末端まで下ろうとすると地形図とコンパスを使わなければなりませんし、地形判断も必要な上、結構危険な箇所の通過もあります。
「浦山口→」という素っ気ない標識に従って、赤いマーキングのある尾根の踏み跡を降りていきます(これはもちろん武州中川に下る人も同じ)。下っていくとすぐにアカヤシオ姫。しかし、蕾、花、共に少なく、今年のアカヤシオは標高が上の方ほど凶作のようです。 標高1200m前後はしかしこれから葉っぱが出てくれば美しい新緑が楽しめそうな自然林。更に下ると、まぁまぁな花付のアカヤシオの樹があり、しゅんとした気持ちが少し慰められます。しかしまたすぐに極端に花付の悪き樹がお目見えしたりして、複雑な気分です。
下り始めて40分ほど…1060mあたりでしょうか、伐採地の手前で、結構な数のカタクリ! 群落とまではいきませんが、これは思わぬプレゼント。登りの北尾根では標高が低いせいもあって花は見付かりませんでしたが、ここは沢山咲いていて、これで今日のアカヤシオの不作もなんとかカバーできた感があります。
その先の大伐採地で下り始めてから1時間ほど経過していたので、一休み。目の前にこの前登ったばかりの大持・小持、そして武甲山…下にはダム湖「秩父さくら湖」の青緑色の湖水が見えて、お茶を飲みながらしばしぼんやり…。後から考えるとこのあたりが篠戸山(1040m)だったように思うのですが、山名を記した標識は見あたりませんでした。
休憩後先に進むと、松浦本に記載通り、鳥獣保護区の赤い看板がありますが、倒れて地面に横たわっています。更にその先、松浦本でいう「コトガ沢の頭」962m地点では、降りてきた人が間違って東のフナイド尾根に入り込まないように、木で通せんぼをした上にお手製の指導標で北へ延びる尾根に左折するように指示しています。
北へ向かい高度を落としていくと、地形図通り送電鉄塔をくぐり、送電線の巡視路らしく小さな木の階段もあったりして、770mの鞍部、クタシノクビレまで下ると、目の前にある大反山(853.7m)は結構な登り返しに見えて、可愛らしいミツバチの指導標↓に素直に従って武州中川駅へと下りたくなります(というより、素直に下るべき!)
せっかく来たのだからと、アホな私は大反山へ登り返しましたが、尾根の直登でジグザグもなく疲れた足には堪える登りです。やっと登り切ったピークはゲンナリするほどの暗い植林の中のピーク。山名標と三角点があるだけです。尚余談ですが、20世紀の分県別登山ガイド『埼玉県の山』では、この三角点ピークを若御子山として紹介していたりします。
疲れた足を休めるべく853.7mピークで腰を下ろし、これからどちらへ降りるか検討します。時刻は14時15分。一般登山道を降りて武州中川駅へ15時35分発の直通に間に合わせるにはコースタイムから見てギリギリ。一方浦山口までの松浦本のコースタイムは1時間50分で、16時38分発の池袋行き直通電車には余裕がありそう…ということで、この時期は羊山公園芝桜組との衝突を避けるべく、直通電車に乗るのが鉄則ですから、松浦本通り、RFで尾根末端まで頑張って浦山口へと決定。
※毎度のことですみません。。。ここからは一般登山道ではなく地形図とコンパスでルートを割り出すバリエーションコースです。地形判断とRFが必要なコースになります。
大反山から下ると尾根が二手に分かれます。左がエアリア赤破線で先ほどの可愛らしい指導標の巻き道と合流しますが、ここは右手というか、真っ直ぐ倒木を超えて尾根をたどると祠があって↑その先が転げ落ちるほどの急斜面になっていますから、慎重に下っていきます。下りきると自然に北に延びる尾根に乗れて(このあたり新緑が綺麗)、その先の小ピークが現在は若御子山というらしく、プレートが三種類ぐらいあります。標高を思い切り間違えて訂正を喰らったプレートもあり、笑えます。
若御子山を後に北東へ、すぐに左手のテープに従って、これまた先ほどよりすごい急下りをします。ロープもあったりして、ありがたく掴まらせてもらいながら下っていくと、ああ今度はヒトリシズカちゃんが沢山咲いています。大岩の左脇を通って更に下ると松浦本通り、本当にツバキの赤い花が敷き詰められた神社があって、思わず、ここまでの無事を感謝すると同時に、この先もどうか無事に下れますようにと祈り、更に下っていくと若御子峠。来た方向を指して「←若みこ山」の標識には「行くな」とか「行かない方がいい」とか落書きがしてあります(笑)。「国見の広場に至る」のビックリするほど立派な指導標が現れ、ここから国見の広場まではエアリア赤実線。
樹が育って両神山は見えにくくなった「国見の広場」でお茶で一服入れてから、立派な階段を下りていきますが、右手に尾根をはずれる階段を見送り、また尾根通しに進んでいきます。ここからまた(短いですが)バリエーションルートです。
送電鉄塔を越えて、その先の小ピークを越えると、また送電鉄塔があり、岩の崩落防止らしいワイヤーが張られたところを通り、なおも尾根の末端へと進むと、もうこれ以上進むとヤバイという地点に出ます。すぐ下に舗装道路が見え、尾根が舗装道路に向かって垂直に切れ落ちているので、無理に進めば死にます(笑)。
(尾根末端近く…新緑も美しかった)
松浦本では「最後は左寄りの石段で舗装道路に降りる」と書かれていますが、石段は見あたらず、代わりに送電線の巡視路らしいトラバース径が左手に見付かったので、これをたどっていくと案の定「奥秩父線2号に至る」の黄色のポールがあって、きれいに舗装道路に着地成功。念のため、尾根末端を見に舗装道路を右手に戻って見てみたところ、やっぱり無理に進んだら確実に転落という尾根の最末端部分でした。
あとは舗装道路をたんたんと下って、浦山口の駅へ。駅到着は16時10分過ぎ。ビールはないので、駅前の自動販売機で久しぶりに炭酸飲料水を買い求め、喉を潤しながら池袋行きの直通電車を待ちました。
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