芝居にうつつを抜かしてます…
前回更新から、もうすぐ3カ月…。今年の花粉が軽かったのは花粉症でない皆様もご存知のこと。桃の花ももう終わろうというのに、この間いったい何をしていたのか、ということを、いい加減ご報告しなければ、ということで、山とは全く関係のないお話です。
ことの初めは、昨夏足を怪我して山へ行けなかった頃、近所の図書館でふと手にした、『文楽の研究 (岩波文庫)』という一冊の文庫本。
歌舞伎もお能も見たことあるけど、そういえば文楽(人形浄瑠璃)は一度も観たこと無いなぁ…。 まぁどうせ読みゃあしないだろうけれど、とりあえずタダだし(笑)借りてみようか、ということで借りて帰ったのです。
岩波文庫、というとやたらに難解なイメージがありますが、芝居のことなどほとんど知らない私でも、この本は意外に読めてしまって、続編の『続・文楽の研究 (岩波文庫)』も、今度はブックオフで購入して読んでしまいました。
文楽というのは、著者の三宅周太郎さんが執筆していた当時は、世襲というものはほぼゼロの世界で、歌舞伎のように親が役者なら子供はどんな大根(ダイコ)も舞台に立てるようなものとは本質的に違うのだということを述べておられて、彼ら文楽に携わる人びとの、その素晴らしい芸に比してあまりに少ない収入のことも、この本で初めて知りました。
本を読み終わり、入門書『あらすじで読む名作文楽50 (ほたるの本)』なども買って、とりあえず、一度文楽なるものを見に行ってみたくなり、ネットでチケットのことを調べてみると、文楽は本場大阪よりも東京の方がチケットが入手し難いのですね。実際そのとき発売開始からだいぶ日にちが経過していて9月のチケットは完売状態だったのですが、しばらくして何気なしにもう一度チケットサイトを覗いてみたら、平日ですが中央十列目のかなり佳い席が取れたのです。演目は『伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)』と「今頃は半七さん、どこにどうしてござろうぞ」で有名な『艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)』。。。休みをとって観に行ったのですが、これが凄く好かったのです。
そして、11月、大阪まで近松の『心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)』をついモノのはずみで観に行ってしまって(実はなぜか関西、ポンポン山は、この観劇のついでに歩いてきたのです)、これがまた竹本住大夫さんの浄瑠璃と人形遣い吉田簑助さんの小春が絶品。ノックアウト状態でした。
それでも、昨年(2009年)中は、文楽だけでしたので、他の週末は天気と体調が好ければ、山に出掛ける時間がありました。
ところがです、年が明けて(2010年)一月になって、職場の気の合う友人に、ふとその「最近文楽を観るようになって」という話をしたのがはじまりで、やがて四月で建て替えになる歌舞伎座に話が移っていきました。
もうしばらく(三年間も)観ることが出来なくなる歌舞伎座の、せめて「幕見」(=普通の観劇と違い、三階いちばん後ろの席=混んでいれば立ち見で一幕だけ観る)ぐらいはしておこうと、仕事の帰りに木挽町(東銀座)なんぞに寄ってしまったのが間違いの始まりでした。
歌舞伎って、上にも書いたとおり、親が役者なら…ってこともあって、正直なところあまり期待していなかったのですが、この幕見がとてもよかった。歌舞伎って、文楽と違って、大向こうさん、という声かける人がいて、その声と、舞台の絢爛豪華さとで、すっかり魅せられてしまいました。
昔、若い頃に友人に歌舞伎座に勤めていた人がおりまして、その人の招待で無料で当時大人気だった坂東玉三郎さんの『本朝廿四孝』を観たことがあるのですが、この二月に観た玉三郎さんの『籠釣瓶』八ッ橋での艶やかさといったら二十五年近く経った今でも言葉にならないほど素晴らしいモノでした。
そして、何度か観に行くうちに今度は中村魁春さんという役者さんがとても気に入ってしまって、もうこれで歌舞伎の方も完全に抜け出せなくなってしまったのです。
職場のその友人も歌舞伎を見に行くようになり、彼もすっかりはまってしまったようで、私に古本屋で入手した歌舞伎の元本をコピーしてくれたり、暇なときに芝居談義に花が咲いてしまったりで、二人して深みにはまって行ってしまったのでした(笑)。そんなわけでこの3カ月ほどは週末は毎週のように東銀座や国立劇場付近に出没していたというわけです。
とりあえず、今月で木挽町の歌舞伎座は閉場。来月から3年かけて建て替えに入る関係で、この一年毎月の如く演ってきた「歌舞伎座さよなら公演」ももうまもなく終わりますので、関西に歌舞伎まで見に行ったりしない限り(笑)は、私の歌舞伎狂いも少しは落ち着くと思うのですが、来月は文楽が2回週末に予定入っていますし、これはたぶん狂うことはないと思うのですが(笑)、先日は千駄ヶ谷の国立能楽堂にまで行ったりしている状態で、すぐに飽きてしまうかどうかも含めこの先どうなるのか、今のところ皆目見当がつかない状態です。
ともあれ、私(ゴン太)は、体調を崩すこともなく、今のところ元気にしております。
爺クサイ趣味ですし、山とはあまりに無関係なオハナシなので、アップするかどうか迷っていたのですが、遭難や体調不良などのご心配をおかけしているようではあまりに申し訳ないな、とこのような駄文を連ねた次第でございます。
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