『白きたおやかな峰』 北杜夫
ああ、とうとう2月は更新無しで終わってしまったなぁ、などと思いながら、その後もずっと更新をさぼってしまって…。毎度のことながら、この間、何度もこのページを訪れていただいた皆様には、ただただ申し訳なく思っております。
今年は例年になく花粉の出足が早くて、とか、さて行こうかと考えていた矢先に「ぎっくり腰」になってしまったとか、二月の財政難とか、探せばいろいろ山行きをサボった言い訳はあるのですが、やっぱりなにより山へ行きタイよボルテージが上がらなかったというのが一番の理由でした。
更に来週と再来週の週末は両方とも土曜出勤の予定なので、恒例の18きっぷのお出かけも見合わせることになりそう…ということで、このようなデッチ上げ記事を捏造している次第です。お暇な方はどうぞお付き合いくださいませ。
で、そのあいだいったい何をしていたかというと、これが実のところたいしたことはしてなくて、ただ本だけは憑かれたように読んでおりました。読んだ本は右側の読書欄にアマゾンのアフィリエイトという形で載せてはいましたが、こちらの方は、まったく私の個人的な趣味ですし、クリックもほとんど無い状態でしたから、読書の記事を載せることはあまり考えておりませんでした。
ただ、今回ご紹介する本、北杜夫著『白きたおやかな峰』は、もし機会があったら読んでみて欲しい一冊だなぁ、と。
北杜夫さんというと、私と同じ年代の方だったら、違いのわかる男のCMに出ていたのをよく覚えておいででしょうし、「どくとるマンボウ」シリーズは航海記ぐらいなら読んだことある方も多いかも知れません。
北杜夫なんて読んだこと無いという方も、山屋さんであれば、この『白きたおやかな峰』は読んで損のない作品ではないかと思います、というより、山やったこと無い人がこの小説を読むとき、クレヴァスやピッケルやザイルはまだしも、デブリとかピトンとかいう用語を説明無しでいいのか…という感じもあるのですが、それはともかく、この物語の中で語られている登山というものは私が普段やっているような山歩きとは全く別物。まさにアルピニズムの極致なのですが、この小説で描かれているのは壮絶な死闘とかそういったものだけではなくて、キャンプ地における人間のユーモラスな表情や滑稽さ、個人個人の内面と歴史に上手にスポットを当てて、ひとりひとりが個性的に愛すべき人として実に人間らしく描かれています。
一九六五年のディラン遠征に医師として同行した時の経験から生まれたこの作品は、当時の登山隊が平気でゴミをクレヴァスに捨ててしまっていることなど、ちょっといただけないという話も含め、この時期の登山隊の様子がよくわかる貴重な資料でもありますが、やはり作品を読んで思ったのは、当たり前の話ですが、プロの文章というのはこうまで違うものなのか、ということ。
北杜夫さんの文章というのは一見平易に見えて、ユーモラスな人だなぁという印象なのですが、よく読んでみると、かなり難解な語彙も使用していて、それが無理なく適材適所であることに気づきます。そして、この人の持つ文章の奥行きの深さというのでしょうか、そういったものに感服せずにはいられませんでした。
ところで、この『白きたおやかな峰』は残念ながら現在のところ、新潮文庫では品切中で、復刊(重版)が望まれるところですが、某大手古書店で105円のコーナーに並んでいるのを一度ならず目撃しておりますので、私のように無理してオークションで落札などすることもないと思います。おそらくですが、お近くの図書館に行けば見つかるのではないでしょうか。
花粉症でお悩みの方、無理してバンザイアタックして、夜中に鼻づまりで苦しむのはもうこりごりだ、と言う方、読書で静かに週末を過ごすのもたまにはイイかも知れません。
あぁ、それにしても悔しいぐらい、雲ひとつ無い快晴の山日和だ。
もし花粉症が完治するなら、悪魔に魂を売り渡しても好い!
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コメント
ゴン太さん、お久しぶりです~~~!
花粉が厳しいのかな~?と思っていましたが、やはりそうなんですね。
悪魔に魂を・・・なくらい辛いものなんですね・・・
それはそれは・・・大変です・・・
でもある日突然なる花粉症なんだから、ある日突然治る事もあるのかもしれませんよ!
「北杜夫」ウフフ、それはコーヒーのCMでしょうか?
どくとるまんぼうシリーズは1冊くらいは読んだ気がしますが、
なんてったって活字が苦手な私・・・気の利いたコメントも出来ずにスイマセン^_^;
ゴン太さんがお元気で嬉しかったのでつい、書いちゃいました。
もう桜の季節が来てしまいましたね。
一年が早い・・・
投稿: cyu2 | 2009.03.15 22:30
cyu2さん、おひさしぶりです。とはいえ、cyu2さんのサイトはずっと覗きに行っていたのですよ。最近はスキーに夢中のようですね。
花粉は、油断していると急にクルようになってしまいました。くしゃみや目の痒みはいいのですが、花粉摂取量がある臨界点を超えると、鼻が完全に詰まってしまって、息が出来なくなってしまう、これが本当に苦しいのですよ。他の症状はともかく、これだけは何とかして欲しい…。
「悪魔に魂を」は、私の会社の上司で同じく花粉症歴20年以上の人がこのあいだ言っていた名文句で、思わず無断使用してしまいました(笑)。
最近山での遭難事故のニュースが多く、「ひょっとしてゴン太遭難?」といった無用なご心配を賜ってはマズイわな、と、こんな記事をでっち上げました。
北杜夫さんの○ールドブレンドのCMご存知でしたか。遠藤周作さんのも好かったですよね~、あの映像どこかに残っていないかなぁ。。。
投稿: ゴン太 | 2009.03.16 19:53
>あの映像どこかに残っていないかなぁ
もしかしたらyoutubeに行けばみつかるかも?
以前「金曜ロードショー」のオープニングが見たい!
という知り合いが調べたらあったんです。
オマケに水曜も月曜もあって私もハマってみてた、と言うのを思い出しました(*^_^*)
時間があるときに私も見て見ます!
投稿: cyu2 | 2009.03.16 22:26
cyu2さん、こんばんは~。
Youtube、いちおう探してみたのですよ。でも考えてみたら、あのCMやっていた頃って家庭用のビデオなんて無かった時代でしょう。だから、あるはずもないのですよ(もしあったら業界人のお宝からのダビングか!)。
ネス○フェのホームページでやってくれないかなぁ、とも思うのだけれど、北さんだけというわけにはいかないだろうから、歴代の違いがわかる男を全部となると大変なことになっちゃうだろうし、やっぱり無理でしょうね~。
「歴代の”違いがわかる男”全部網羅」のDVDが出たらきっと買っちゃうだろうな~。どこか出さないかな~(笑)。
投稿: ゴン太(ネスカフェ年中常備) | 2009.03.17 22:56
ゴン太さんっ!見つけました!
あ、でも肝心な北杜夫さんは実はどんなお顔なのか知らずに探せませんでしたが・・・
http://www.youtube.com/watch?v=sLTKvO8TJYQ
健サンを発見しました!渋いですーーー。
でもホントにyoutubeの世界って不思議。
あれらの画像がどこから湧いて出てくるのか?アナログな私にはさっぱり解りません(´ρ`)ぽか~ん
投稿: cyu2@仕事中 | 2009.03.18 12:49
cyu2さん、レス遅れまくってしまってゴメンナサイ。
ご案内いただいたYoutubeのページは、沢井忠夫さんだけですよね。北杜夫さんはどこにも出ていないと思います。
ただ、http://www.youtube.com/watch?v=fYd2qsugZx4&NR=1" TARGET=_blank>こちらのページで懐かしのこりあん先生(遠藤周作さん)が見られるのですね~。こういうふうにネスカフェの方で昔の映像を持っていることは確かなので、いずれいつの日かお目にかかれることがあるかも知れません。
まぁ、遠藤周作さんはお亡くなりになってずいぶん経つので、まだまだお元気な北杜夫さんの映像が見られるようになるのは、ずいぶん先のことになるかも知れませんけど(笑)。
投稿: ゴン太 | 2009.03.20 16:12