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2009.01.07

【いにしえの峠道を訪ねて…荒倉山】 山バス情報94

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(平川峠への登りで…)

【山行日】 2009年1月4日(日)

【使用公共交通機関の詳細】

「鉄道」
新宿  05:18 - 06:13 高尾 (中央線各駅停車)
高尾  06:14 - 08:10 穴山 (中央線各駅停車)

「歩行」
穴山駅 08:20 - 08:55 穴山橋
穴山橋 09:00 - 10:05 平川峠
平川峠 10:15 - 11:10 荒倉山
荒倉山 11:35 - 12:05 平川峠
平川峠 12:15 - 12:30 小武川の河原(象の鼻)
象の鼻 12:40 - 14:10 円野上バス停 

「バス」
円野上 14:37 - 14:53 韮崎駅 (山交タウンコーチ 510円)

「鉄道」
韮崎  15:08 - 17:02 高尾 (中央線各駅停車)
高尾  17:08 - 18:02 新宿 (中央線快速電車)


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(つぶらの松=山頂手前の展望地より 八ヶ岳)

荒倉山と言っても、あまり馴染みがない山だと思います。エアリアでもちょうど南アルプス『甲斐駒・北岳』の右上端にギリギリ入らない…そんな中途半端なところに位置しているのです。

それでもこの山を訪れてみたいと思ったのは、現在のように御座石や青木鉱泉へバスが通っていなかった頃、途上にある平川峠(たいらかわとうげ)は鳳凰三山へ行く岳人が避けて通ることのできない峠だった、ということを知ったためです。

ですから私個人としては荒倉山というピークよりも、いにしえの峠道である平川峠の峠道に興味がありました。
穴山駅や韮崎駅は都心から鈍行で行っても片道2500円を超える場所。。。18きっぷのシーズンはこの峠を訪れるのに絶好の機会というわけです。

山梨県の山 (新・分県登山ガイド)』の旧版(山村正光著)では、平川峠の西半分がコースとしても紹介されているのですが、現在流通している新版の方では、「平川峠の小武川側の道はもはや定かではない」と書かれ、コースとしては紹介されていません。
平川峠のある尾根上に林道が走っている現在では、わざわざ峠を小武川側へ越える酔狂はほとんどいないでしょうし、歩く人が少なくなれば消えて廃道化となってしまうのが峠道の運命かもしれません。。。が、峠フェチの私としては、いにしえの峠道を何とかたどって峠越えをしてみたい…、そう思ってのチャレンジでした。

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(穴山駅近くより荒倉山:奥は鳳凰三山)

今回私は自分の家から一番早く乗れる中央線に乗って、穴山駅から歩きましたが、次の八王子発06:35の中央線で韮崎から08:38発 下教来石下 行きのバスに乗れば、ほぼ同じ時刻(9時頃)に穴山橋を出発できますから(私はちょうど橋の途中でバスに追い抜かれた:笑)、穴山駅から歩く必然性は特にありません。ただ、昔の登山者はおそらく穴山駅から歩いたのでは…とそんな妙なこだわりから穴山駅発としてみたのです。

穴山橋には、「平川峠・荒倉山」のおおきな茶色の標識があり、ここから登山道まで迷いようがないほど細かく頻繁に道標がついていて、これをたどって集落の中をいけばやがて龍珠院というお寺に至ります。

龍珠院のすぐ先で円池の道を右に分けてようやく登山道らしくなります。10分もしないところに、お目当ての「鳳凰山」の標識があり、祠を過ぎて落ち葉の登山道を登るようになります。昔ながらの登山道らしく、深く広く抉れていて、陽の差した趣ある明るい峠道を上りながら、キスリングに布のテントを詰め込んで登り降りした いにしえの登山者に思いを馳せます。昔ながらの峠道の傾斜というのは本当に身体にかかる負担が少なく、一級の芸術品。こればかりは現代人が真似して作ってみようと思ってもなかなか難しいでしょう。

途中八ヶ岳など望みながら、落ち葉を踏みならしていくと平川峠。しかし、未舗装とはいえ林道が尾根上を走っており、おまけに登山者の車が駐車してあったりして、とても往時の面影を探す気にはなりません。。。一気にしらっとした気分になってしまいました。

しかし、峠には行政の指導標の他に手製の道標もあって、こちらには小武川を指した木片も打ち付けられていて、これは何とかなるかも知れないと、期待を胸に、とりあえずは荒倉山を目指します。

林道の右手にすぐ登山道があって、こちらもほどよい傾斜で急坂は切り返して登るようになっていたりして、なかなか歩きやすい径です。でも残念ながら延伸した林道と再度交差してしまい、林道により分断されて付け替えた登山道の部分は若干歩きにくくなっていたりします。

地元の小中学生たちが作ったらしいユーモラスな標識をたどって登っていくと、やがて八ヶ岳がきれいに見える「つぶらの松」という場所が山頂の直前にあり、良く見れば、八ヶ岳の左手にはっきりと北アルプスが♪ 展望はまるで期待していなかっただけに、これにはちょっと感激。

山頂は、かつては展望どころか山名標識も何もなかったそうですが、今では立派な標識が複数あり、なんと富士山が展望できるようにその方向だけご丁寧に伐採してあります。甲斐駒や鳳凰の展望はもしかしたら…と思っていたのですが、やはり展望というと南アより富士山なのですかね。

11時過ぎと少し早いですが、誰もいなくなった静かな山頂で、せっかくですから富士山を眺めながらのお昼御飯にしました。

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注意:ここから先、峠を越えて小武川へ降りるのは、もはや一般道ではありません。よい子の皆さんは、こんなバカな真似はよして(笑)、円池(つぶらいけ)経由で龍珠院へ戻る周回コースを歩いてください。
高度差100mもない緩斜面を降りるだけですが、コンパスで自分の行くべき方向を指し示すスキル+廃道になりかけの峠道の特徴がわかっていないとこんな短い下降でも怪我をしかねませんので。。。

昼食後、来た道を戻り再び平川峠。ここでいちばんひっかかりやすいのは林道の左に見える小型車両なら通れそうなほどの幅広の道。こちらの道を少し辿れば判りますが、下るべき西方向には道形は一切見えず、この道は尾根をトラバースするように北へと向かっていくだけです。

古の峠道は、手製の道標の示すように、峠を背にして西方向に藪の中のあえかな窪みを辿っていきます。峠からの出だしは非常に判りにくいですが、西進して5分もしないうちに「あ、これだ!」とわかる昔ながらの峠道独特の抉れが現れ、峠道の道形がはっきりしてくると、↓のような往時の標識が見つかることと思います。登りで見た「鳳凰山」の標識とよく似ていますが、こちらの下りの標識は「鳳凰山登山道」と「登山道」の文字が消えずに残っています。

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標識が現れれば、道形はいっそうハッキリして、落ち葉のラッセルを楽しみながらジグザグに下ると、あっという間に真っ白い石が印象的な小武川の河原に降り立ちます。小武川のやや下流で水量の少ないところを徒渉。ガードレールの切れ目から車道へ上がります。

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(峠道、小武川側はこんな感じ…小武川の水面も見える)

小武川の徒渉は橋も飛び石もありませんから大雨の後などは危険でしょうし、徒渉するにしてもこの時期は靴を脱いで渡ると、とんでもなく冷たい水ですから覚悟してください(笑)。

車道に上がった後は、御座石鉱泉か青木鉱泉まで歩いて一晩泊めてもらいたいところですが、そんなお金はどこを探してもないですし、泊まってしまっては18切符のうまみもあまりありません(笑)から、反対方向へと向かいます。長い車道歩きですが、途中、両鉱泉の標識を何度も見ることが出来、なつかしいデコボコの車道歩きを交え、猿にも遭ったりしながら、20号線まで出て、暖かい陽差しの中、下教来石から来る韮崎行きのバスを待ちました。

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コメント

ゴン太さん、こんにちは。
峠フェチでいらしたのですね、知らなかった

>キスリングに布のテントを詰め込んで登り降りした いにしえの登山者に思いを馳せます。昔ながらの峠道の傾斜というのは本当に身体にかかる負担が少なく、一級の芸術品。こればかりは現代人が真似して作ってみようと思ってもなかなか難しいでしょう。

う~ん、素敵な山歩きですね。
穴山駅から歩く、というこだわりもいいですねー。
こういうオトナな歩き方ができるとまた、全く違うものが見えてくるんですね。
私もゴン太さんのお話しを読んだとき、キスリングを背負っていた白黒写真の父の姿を思い出しました。
なるほど~~~とただただ感心して読み入ってしまいました。
あ!18きっぷ消化できそうですね

投稿: cyu2 | 2009.01.08 15:45

cyu2さん、こんばんは~。

大人の歩き?でしょうか。逆にずいぶん子どもっぽい山歩きな感じもしますが(笑)。。。でも、こういう昔の人がフツーに歩いていたルートを今でも辿ってみることが出来るだけ好いのかも知れませんね。かつての峠道は廃道化しただけでなく、林道によって破壊されてしまったところが多いですから…。

今や御座石や青木の行き帰りに峠越えの歩きをするなんて考えつきもしないかも知れませんが、私が生まれるちょっと前ぐらいまでは、登山者といったら皆こんなふうに歩いていたのでしょう。穴山駅を朝出発して一日目は鉱泉までなんて、何ともゆったりした時間の流れがいいですよね~。

お父様もおそらくこの峠を越えたことがおありだったのではないでしょうか。私も歩きながらそのくらいの年代の方々を心に思い描いていました。。。

投稿: ゴン太 | 2009.01.08 22:20

ゴン太さん、こんにちは。

自分も8時10分着の電車でした。それほど急がない山では乗換が少なくていいですね。自分も下教来石行きのバスがちょうど行った所に当たりましたよ。(^^)

林道歩きは自分はあまり薦めません。甲斐駒をみられるメリットはありますが。普通に往路を戻る方が楽しいと思います。円池は立ち寄る価値はあります。

ちなみに、穴山駅に大きなザックを持ったグループがいましたよ。タクシーなら韮崎まで行きそうだし、もしかしたら歩いてきたのかな。

投稿: リブル | 2009.01.09 21:15

15年前の夏、早川尾根から下山の際、平川峠越しようとしましたが、藪で敗退しました。
20年前以前は、問題なく通れたのに。
ああ、なるほど。冬場なら今でも通行可能なんですねぇ。
(渡渉は相変わらず、うろちょろさせられるようで。)

投稿: もりたさとる | 2009.01.10 12:57

リブルさん、こんばんは。
コメントどうもありがとうございます。

同じ電車で同じようにバスに抜かれましたか(笑)。林道歩きはやはりちょいと退屈でしたか~。実際にあるいた人の意見というのは結構重要なので、参考にさせていただきますネ(円池は私も寄ってみたかったので)。

穴山駅で大きなザックを持っていた人がいたということは歩いてきたことも考えられますが、ただ、峠の小武川側はどう見ても前日に人が歩いたとは思えなかったので、歩いたとしても別ルートではないか、という気がします。
もしかしたらタクシー代倹約で穴山駅までとしたのかも知れません(私ならぜったいそうしますヨ:笑)。

投稿: ゴン太 | 2009.01.10 17:46

もりたさとるさん、こんばんは。

やはり歩かれていましたか~。
歩いてみて私も思いましたが、確かに夏場は藪がきつそうですね。それと小武川の方からですと、現在は峠道の取り付きはマーキングもなく、かなり判りにくいと思います。

渡渉は、水量が少ない今の時期は冷たいのさえ我慢すれば好いのですが、多いと渡渉地点をどこにすべきかかなり悩むでしょうね。

投稿: ゴン太 | 2009.01.10 17:51

ゴン太さん、こんばんわ。
個人的には荒倉山よりも鳳凰への登路としての平川峠越えの方に興味があったので参考になりました。

登りに採る分には秋でもそれなりに藪はありそうですけど何とかなりそう、かな?とにかく穴沢駅から行く先の鳳凰を眺め、過去の遺物を見つつ平川峠を越えて鳳凰を目指す歩きを想像することが今までにも結構あったのです。(^-^)

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: komado | 2009.01.14 19:10

komadoさん、こんばんは~。

komadoさんレベルなら、たぶん、なんてことはない、というか、登路はともかく、峠を降りる方は拍子抜けするぐらい、あっというまに終わってしまうと思います。登路に関しては道形は全く問題ありませんし…。

夏は藪もキツイでしょうが、それより、穴山橋の先までの車道歩きがキツイでしょうね。行くなら私も秋が好いと思いますが、峠の向こう側は木が低い位置まで垂れ込んでいるので、大きな荷物だと、木がかなり邪魔くさいだろうな、と感じました。

私も、この峠道を越えて鳳凰山へ行ってみたいと、けっこう真剣に思いましたヨ。

こちらこそ、今年もどうぞ宜しくお願いいたしますです。

投稿: ゴン太 | 2009.01.14 19:51

お久しぶりです。こちらのブログを見て荒倉山の存在を知り、年末に歩いてきました。もっとも駅からではなく、穴山橋傍の公園の駐車場からでした。長沢洋さんの『山梨県の山』の通りに歩きました。山頂では小雪が舞ってくるというステキな天気の為、眺望はNG。ところが、林道を下り始めた頃に天気が良くなり、奥秩父や富士が見え、ご機嫌の下山でした。

投稿: のぞむ | 2010.01.12 22:58

のぞむさん、こんばんは。お久しぶりです。
忘れないでいてくれて嬉しいです(笑)。

ちょうど一年前の山行ですね。私が行ったときは冬晴れで朝からずっと晴れていて、山頂では富士山も八ツも好い眺めだったのですが、そうでしたか、山頂で小雪だとさぞかし寒かったでしょう。

それでも林道を降りる頃に眺望が開けてきたなんて、それはそれでドラマチックで佳いですね。

私の方は、CDなどにお金をつぎ込んでしまって、ずっと山に行けない状態です。来週末も用事があって、山に行くのはいつになる事やら自分でもまだちょっと分からないところですが、花粉シーズンに突入する前に少し歩いておかないと後悔しそうなので、今月中になんとか山行きの費用を捻出しようと頑張っているところです。

こんな調子ですが、のぞむさん、今年も宜しくお願いいたしますです。

投稿: ゴン太 | 2010.01.13 21:52

廃道みたいになってしまったんですね
私が職場の仲間と通ったのは35年前になり改めて時の流れを感じてしまいました。

鳳凰三山からの帰り道でしたが平川峠を下りたところにプラムが美味しそうに実っていたことも思い出しました。

あのときの仲間もバラバラになり今は何処でどうしているやら....。

投稿: files | 2010.03.19 18:14

 filesさん、はじめまして。コメントどうもありがとうございます。
 当時の状況をご存知の方からのコメントでたいへん嬉しく思っております。

 35年前というと、私が小学校を終えようかという頃になります。私はその頃北多摩におりましたので、当時遠足などで行く、奥多摩や檜原村あたりでも相当な山奥であったと記憶していますが、その頃はまだ皆さん鳳凰への行き帰りに平川峠を徒歩で越えていたのですね。

 今は、おっしゃるとおり平川峠の小武川側は実質的には廃道と呼ばれても仕方のない状況です。
が、径さえ見付かれば、往時は本当によく歩かれていたのだなと、その独特の径の抉れ方で判ります。多くの登山者がここを歩いたのだなと頷きながら歩いたことを一年以上経った今でもよく覚えているくらい、印象的な峠道でした。

 小武川側はごく短い道のりですが、それでもあの峠道が廃道となって誰も歩くことがなくなってしまうと思うと本当に寂しい気がします。

投稿: ゴン太 | 2010.03.20 21:52

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